2024年6月13日タレントの佐藤弘道さん(NHKの体操のお兄さん)が脊髄梗塞を発症されたというご本人からの告知を受け、テレビ等のメディアが「脊髄梗塞」を知る切っ掛けになったようです。
13日と14日はこのホームページへのアクセスも驚くほど増えました。新しいニュースが出てくるわけではないので、すぐに終息しましたが、出版物は取材から発行まで時間がかかるので、追って紹介されています。(取材依頼は6月16日)
願いが叶うなら、リハビリで歩行ができるようになられることを期待しています。
(取材依頼は6月21日・担当科学医療部)
<8月6日夕刊(大阪本社版)>
背骨の中を通る神経の束・脊髄の周囲の血管が何らかの原因で詰まる「脊髄梗塞(こうそく)」になると、両脚のまひなど重い症状が表れます。患者数が少なく、治療法が確立されていませんが、リハビリで少しずつできることを増やしていくことが大切です。
体の中に張り巡らされた神経は電気信号をやりとりして、皮膚で感じた暑さ寒さを脳に、逆に「体を動かせ」という脳の指令を筋肉に伝えるなどの役割を果たしています。
脊髄は神経全体を統括しています。椎骨と椎弓の2種類の骨で覆われ、首から腰まで伸びています。首のあたりは頸髄、胸は胸髄、腰は腰髄に分類され、それぞれを守る骨は頸椎、胸椎、腰椎と呼びます。
脊髄梗塞になると、突然の背中の痛みや、両脚のまひ、感覚の異常などが表れます。今年6月、NHKの「おかあさんといっしょ」で体操のお兄さんを務めた佐藤弘道さんが、この病気のために芸能活動を一時休止すると発表しました。
脳梗塞に比べると患者数は少ないです。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)では、脳内科の入院患者の1000人に1人程度とのことです。動脈硬化や不整脈がリスクだと考えられますが、若年で発症することや、大動脈の手術後の合併症として起きることもあります。
症状の重さは、梗塞が起きた場所や範囲で様々です。どこに異常があるのかを診察で絞り込み、その部分の磁気共鳴画像装置(MRI)の検査や造影検査が行われます。血管の奇形や腫瘍による圧迫など、他の原因を除外する必要があります。
早期の脳梗塞で使われる血栓を溶かす薬などが脊髄梗塞に応用できる可能性はありますが、有効性を示すデータがないのが現状です。患者数が少なく、診断までに時間がかかるケースが多いためです。
まず、神経細胞の腫れを抑える薬を使って悪化を防ぎます。急性期病院で1~2週間入院した後、転院先で数か月リハビリに励み、生活の自立度の向上を目指すのが一般的です。
患者の在宅医療を行う葛西医院(大阪市)の小林正宜さん(総合内科医)は「突然体が不自由になり、うつ病などにつながることもあります。障害者支援の制度などを活用し、少しでもやりたいことを実現していくことが大切です」と話します。
★「脊髄梗塞患者の会」代表、東京都の川尻陽子さん(70)は、2019年12月に発症し突然車いすの生活となりましたが、現在は家族らの支援を受けながら旅行も楽しんでいます。
歩けなくなったつらさに加え、続く痛みや、排せつが自力でできないことなどに悩まされてきました。いずれも元通りにはなりませんが、薬やリハビリの成果で、コントロールが効く範囲が徐々に広がってきたといいます。
今は週2回のリハビリや毎日の自主トレーニングを続ける傍ら、患者の会で当事者同士の交流を企画し、病気の情報発信を行っています。「日々目標を持ち、前向きに人生を楽しめています。他の患者さんにも希望を持ってほしいです」と話しています。