退院

ローズマリーの香り

5月の爽やかな朝、屋上へ連れて行ってもらった。小さな公園のようになっているここに来ると、ローズマリーの大きな株が見事で、手で包むように滑らすと香りが手に移って、大好きな香りをかぐことができる。爽やかな空気の中で空を見上げながらの一時、心から幸せだと感じる。たとえ身体が動かなくなっても、この気持ちだけは持ち続けたいと思う。

スロープを押してもらって一段高くなっている所に上がった。足湯ができるような名残がある。立てないので、車椅子の手すりでプッシュアップして背伸びをすると、自宅マンションが見えた。家屋調査に行ってくれたOTの女の子に教えてあげると驚いていた。もっと早くここから見ればよかったと、ちょっと残念に思った。

入院生活も残りわずかとなったので、シフトで会えない人もいると思い、親身に接してくれた介護士さんにお礼を言った。夜中に便失禁し、当たり前のように処理してくれた人たちには頭が下がる。看護師さん介護士さん、シーツ交換の人達、お風呂で失敗しても明るく対応してくれた人にも、本当に沢山の人達の手を借りて、外に出る準備をさせてもらった。心からお礼を言います。「ありがとうございました。」

最後のお風呂

お風呂に入ることができるのも最後となった。家に帰ったらシャワーだけの生活になる。お風呂の担当の人も退院が近いことは知っていたので、いつもより1分長く温まることができた。「このお風呂が家にあったらいいね。いくらするんだろう?」というと「300万位するみたいですよ。」と教えてくれた。

以前から湯船につかることが珍しくなっていたので、シャワーだけになるのは問題ないが、いつか温泉につかれるようになるのが夢といってもいいかもしれない。

身体が硬くてトイレに行くのが面倒な朝晩だけベットでの導尿を続ける中で、リハビリパンツを脱がないで横から導尿していていい気になっていたら、今朝ライトもつけず導尿中、カテーテルの出口が尿器に入ってないのに気づいた。ア~ァ
5:30に介護士のおじさんに防水シーツを替えてもらった。家では注意しないと自分で何もかもやらなければならなくなる。ここでも注意するのは当然だったけれど。笑

仕事として接してくれている人にとって、患者としては大勢の中の一人かもしれないが、患者側から見ると、助けてくれた人たちの仕事としてだけではない思いやりや優しさに救われることはとても多い。特に多くの笑顔に助けられた。

夜、気持ちが高ぶって眠れなかったので、長野での夜のようにラジオを聞こうかと思ったがやめた。
例えば旅行に行っても、トイレは入れるとして、シャワーを浴びる事さえ難しいだろう、車椅子から床に降りるのも台とプッシュアップバーがなければかなわない。車椅子と同じ高さのベットにしか横になれない。できない事が多すぎていろんなことが頭に浮かんだ。

亡くなった父と心で会話をした。「しよんなかがや!のんびり探さじゃ」と言いてくれた。
(仕方がないじゃないか!ゆっくり探さなきゃ)

退院の日

5月25日162日目(116日目:自宅1日目):昨夜は担当看護師のIさんと男性看護師のS君がわざわざ部屋まで来てくれて、互いにとって大切な、そして興味深い関係であったと実感した。他にも深くかかわってくれた人たちはいたが、特に記憶に残る人達だ。

退院を祝うかのような晴天に恵まれた。すっかり帰る準備ができたところへOTのFさんとPTのS君、N君、K君も挨拶に来てくれた。ずっとマスク越しの顔を見ていたが、写真を撮りたいというので、マスクを取って撮影したが、思っていた感じと違って戸惑った。みんなイケメンだった。笑

ナースステーションを通った時、中からみんなが手を振ってくれて、エレベーター前でお別れをした。仕事中で会えなかった多くの人にも、心の中で感謝を告げた。
玄関では先生と看護師長さんが揃って見送ってくれた。介護タクシーの窓から大きく手を振った。なかなか恵まれた患者だったのではないだろうか。退院後に使う備品も沢山用意してくれた。

 

家に帰って、時間が経つにつれ感覚が慣れていくのが分かった。自分にとって動きやすい環境に少しずつ変えていけるだろう。お昼はモスバーガーを買って来てくれて、ビールで乾杯した。夜はリクエストしたお寿司。昨年クリスマスに飲む予定で買ったあったシャンパンで乾杯した。162日ぶりのお酒はとても美味しかった。

いつも11時頃に寝ていたと言っていたが、9時前には寝室に入った夫、きっと安心したのだろう。楽しみに待っていてくれたこと、ケアマネの計画書で知った。笑

断捨離

レンタルの介護ベットで初めて寝るからか夜中1時頃目が覚めて、夜中だけベットで導尿することにしていたので、やってみたが50ccだけだった。羽毛の薄掛けさえ暑く感じて、麦茶を飲みにキッチンへ行った。簡単な一つ一つの事が、以前とは違って手間と時間がかかる。これにも慣れていかないと、いちいち煩わしく考える訳にはいかない。

退院前から考えていた断捨離の一環として、二人のボルフ道具一式を捨てることにした。もう行くこともないからと夫が言うので、ちょっともったいない気もしたが、区の粗大ごみとして出すことにして予約をした。

バックとドライバーやパター14本迄300円だという。
夫は以前ゴルフ練習場の支配人をしていて、その時賞品でもらった新しいバックに入れ替えたばかりだったが、300円で捨てるという選択に迷いはないようだった。私の中には少し申し訳ないという気持ちが残った。退職してこれから楽しめるはずだったのに。

粗大ごみの券300円2枚をコンビニに買いに行くついでに、薬局で尿漏れパッドを買う為に電動車椅子で駅前まで出かけた。
歩ければ往復10分で帰ってこれるが40分かかってしまった。マンションの玄関で動かない足に靴を履かせ、方向転換してからフットレストを付け、やっと外へ出れる。これからは外へ出るのも少しおっくうになるかもしれない。

午後は初めてシャワーを使った。車椅子から床に降りる台をセットして、大判のバスマットを敷く、お風呂場のバスマットもタオルも全て準備は夫にやってもらい。片付けもすべて夫に頼んだ、ア~彼は大変だ。

3ケ月に1度訪ねてくれるという看護師さんが来てくれた。
間に合うようにトイレに行ったが、一歩間に合わず漏らしてしまった。着替えを持ってきてもらうのも大変な事だ。一つずつ慣れていくしかない。

弟も心配して電話をくれた。まだテレワークが続いていて自宅だと言っていた。
私がせっかちな性格だと知っていて、ぼちぼちやるように言うので、夫の方がよりせっかちだわと答えて笑った。

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