涙のクリスマス

見上げてごらん夜の星を

9日目:昨夜は9時の入眠剤を11時にしてもらったが、結局逆に熟睡の時間は無くなってしまった。眠りは大事なはずなのに、まだ旨く眠ることができていない。夜中、足のマッサージをしていて足の温度は感じられたが、足が温度を感じている気がしない。

形だけでも正座はできている。膝立ちにはもう少し腕の力が必要だ。
夜中一人でジタバタしている。

 

今朝は食パンにジャムとオムレツにスープ、ヨーグルトだった。ゆっくり食べて完食。体重が気になるところ。内心ずっと1400kcalで、運動はしてないものの、これほど健康的なというか、カロリーの少ない食事は家ではできないので、やせたような気がしている。心なしかお腹もへこんできたような。

 

1回目のリハビリの後、体重を測りに1階に降りた。今までストレッチャーに乗って、天井を見ながら運ばれていたので、車椅子でロビーを通った時、テレビの画面を8日ぶりに見て、なんだか社会と繋がった気がした。笑

 

体重を測った後、PTさんに聞くと、「人が居るからエレベーターの中で」と気を使っている。「これでも20代の頃は40㎏台だったのよ!」とこんなところで言ってみたところで、言い訳にもならない。エレベーターに入ると56.4㎏と書いてある紙を見せてくれた。

 

ある意味ショックというより笑ってしまう。24時間点滴が続き、半端じゃない量だったからむくんでいるのだろうか?意外にリハビリで筋肉がついたとか?まあ、やせ細るより健康的に見える方が良いよね、と自分を納得させた。

 

今日はクリスマスイブ。11時からちょっとしたイベントがあるという。心が浮き立つ。ランチもエビピラフやオードブルにクリスマスデザートが出るという。入院していてもクリスマス気分になれるのは嬉しいものだが、夫は買ってあったシャンパンを私が退院してから飲もうと言っている、一人のクリスマスを寂しく思う事だろう。

 

担当の先生の回診とすれ違う。「どう?相変わらず?論文見ると長くかかるっていうから、じっくり頑張ろう!」といつものように明るく声をかけてくれた。私もとっくに心は長くなっている。今日は最後の点滴で明日からはステロイドも飲み薬になるらしい。

 

4階の半円形のナースステーションを取り巻くように患者さんの車椅子が並んでいる。男性7~8名、女性数名が待っている所に、トナカイの着ぐるみを着たおばちゃんらしき人が台車に乗ってやってきた。廊下に出れない人もいるので、ベットの周りをまわっている。

 

お隣さんは首の手術の為に行ってしまった。首の脊椎を3本切断して人工骨を入れるという。聞いただけで背筋がゾワッとなるようだ。医学の進歩で健康になるなら、ありがたいことだ。明日は集中治療室だが、元気に回復して戻るだろう。頑張ってほしい。

 

看護師さんたちのハンドベル「きよしこの夜」に胸を打たれ、学生時代ブラスバンドだったという看護師さんはホルンで「見上げてごらん夜の星を」を吹いてくれた。聞きながら、なぜか涙がポロポロと流れた。この時の動画は今も私のスマホに残されている。

 

患者も参加させるため、ベルを持たされた。私は「ファ」の音を振って、みんなで音を鳴らす。短いイベントだったが、一生忘れられない素敵なプレゼントになった。

 

今日で点滴が終わり明日からステロイドが錠剤になると、お薬係の人が説明に来てくれた。それも朝昼夕から始まって、翌日は朝昼、その翌日は朝のみとそこで薬は終わる。その後の治療が不安になるが、長く使える薬ではないという事だった。

 

2回目のお風呂は最後だからと前回の2倍位、しっかりゆっくり使わせてもらった。

女の子二人に全身を洗ってもらって天国のようだ。窓からは南アルプスの山々が見えた。前回より少しだけ温度を感じる範囲が増えたような気がした。

消えた夢

12月25日10日目、昨夜も新しい入眠剤をもらうが効かず深夜のラジオで時を過ごす。日々少しずつ感覚や思いが変化していく。アイスパックを使い続けてきたことで、身体の芯が冷えている気がして枕に変えた。薬も飲まず普通の睡眠を心がけようと思う。

朝、看護師さんが「あの薬は悪夢を見る副作用さえなければ・・・」などと面白い事を言ったが、その時私は今まで考えもしなかった犬を飼ったらどうだろう、自分が面倒を看る対象が、癒しをくれるかもと考えた事が、不思議だった。

彼と二人で九州を旅行するのに、飛行機で降り立つ熊本に中古車を買って置いておき、実家もリフォームをして、東京都と熊本で「人生の楽園」生活もいいかもしれないとか、車椅子でも結婚相談所を二人で銀座に開いたら、スタッフも雇って、良い感じになるかもしれないなどと、楽しい未来を思い描いていれば、かなうような気がしていた。

一日一日無駄にしない生き方をしなければ!この人生を与えて下さった神様に感謝ができる自分でいよう!と真剣に考え続けていたような気がする。

副医院長の回診があり、明日のMRIを見た上での判断を伝えると言われる。その後転院について相談員と話す。この病院の役割は緊急の初期対応で、次の段階に移すので、平均2週間だという。年末年始が入る為、私の転院は1月半ばになるのではないだろうか。

状況により、そのままリハビリ専門病院に入るか、専門医らしい人の治療を受けるかだと思う。転院となると介護タクシーを使うことになるが、以前横浜まで乗った人の場合17万だったらしい。レンタカーや電車でと簡単に考えていたが、そうもいかず20万位は考えていた方が良さそうだ。投資信託の1月の分配金が出たら解約しようと思う。

2回目のリハビリは台に横になったまま、90度まで身体を起こし立ったが、地に足がついている感じがしない。

3回目のリハビリは車椅子で、病院の外の空気を吸いに連れ出してくれた。10日ぶりの外の空気に感激した。明るい太陽の温もりと頬を伝う風が心地よかった。

この年のクリスマスは、こうして普通の一日として過ぎていった。

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